Pediatrics 小児科診療の基本
予防接種について
予防接種の意義
予防接種とは薬物などで生体に免疫(抵抗力)をつけることであり、ワクチンとはその免疫をつけるための薬です。
予防接種は、被接種者(接種をうけるヒト)が病気にかからないよう健康を守ることが最も重要な目的ですが、大多数が予防接種を受けそれにより免疫(抵抗力)を持つと、その感染症が減少するので、
①予防接種を受けられない人や②受け損ねた人そして③受けたくない人も守られることになります。つまり、予防接種は自分や家族だけでなく見知らぬ人も守ることができます。
ワクチンとは
ワクチンは、かかると具合が悪くなる病気に対してより安全・確実に免疫(抵抗)力をつけることにより、病気を予防するための薬剤です。
したがって、免疫力に乏しい乳幼児や高齢者に特に有用です。特に、新生児は母体からヘソの緒を通じて免疫(抵抗力)をプレゼントされますが、それは~6カ月頃には著しく減ってしまうため、
その過程で非常に具合が悪くなる可能性がある多くの疾患に対する危険性があります。そのため、ワクチンにより予防することが極めて重要なのです。
したがって、生後2~4カ月の乳児では多種類のワクチンによる予防接種が定期で実施されます。
生後6カ月以降は、徐々に自身で免疫(抵抗力)を作れるようになりますが、2(~3)歳頃までは成人と比較すると明らかに免疫(抵抗力)が劣るため、その頃までは比較的予防接種の頻度が高いのです。
つまり、ワクチンとは『自然に感染するよりはるかに安全かつ効果的に』免疫を付与するための薬です。
ワクチンの特徴と種類
ワクチンには、次の3種類があります。
1.生ワクチン
生きたウイルスや細菌の毒性を、症状がでないように極力抑えて、しかも、自然に感染 した場合と同様に免疫を誘導します。 生ワクチンは生体で増殖し、軽く感染することで基本的には1回接種で強い免疫を誘導します。したがって、長期間効果が持続しますが、~5年程度経過すると効果が減弱することがあるため、追加接種が必要なことがあります。ただ、生ワクチンは極力弱毒化されてはいるものの、不活化ワクチンと比較すると接種後の発熱などがやや多く、また非常にまれではありますが、
自然感染による合併症を予防接種による副反応として起こす可能性があります。
例 ロタウイルス感染症、結核(BCG)、麻疹(はしか)、風しん(三日はしか)、 おたふくかぜ、水ぼうそう
2.不活化ワクチン
体内で感染に対する防御をつかさどる成分(抗体)を誘導することで、効果を発揮します。生ワクチンと比較して、効果持続期間が短期間のため、長期間効果を持続させるためには、複数回の接種が必要です。
しかし、生ワクチンと比較して全身性の副反応は少なく、局所反応(腫れる、赤くなる、など)が主です。
例 B型肝炎、ヒブ感染症、肺炎球菌感染症、百日せき、ポリオ、日本脳炎、インフルエンザ、コロナウイルス感染症
3.トキソイド
細菌の作り出す毒素の毒性(人体に対して害を及ぼす可能性)を薬剤(ホルマリン)で不活性化(なくす)し、免疫を誘導する働きだけにしたものです。
例 ジフテリア、破傷風
ワクチンの安全性
接種後の主反応と副反応および有害事象
ワクチン接種後には、有効成分による主反応以外に、被接種者(予防接種を受けた小児)にとって望ましくない反応もあり、それには副反応と有害事象の2種類があります。
副反応とは、ワクチンの有効成分あるいは添加物により起こるもので、接種後に発生した望ましくない反応が、ワクチンに関連して起きるものと科学的に想定できる反応です。
それに対して、有害事象は望ましくない反応のうち科学的にワクチンと関連して起きるかどうかが不明な反応のことです。
被接種者の体は、誰一人同じではないほど複雑であり、ワクチン接種後は、予期できない極めてまれな異常反応が起こり、重大な健康被害が生じる可能性はけっして0ではありません。
ワクチンの種類によって多少異なりますが、数10万回~数100万回に1回ほどの割合で入院を要する異常反応が起こることがあり、数100万回~1000万回に1回は生命にかかわることがあるのも事実です。
したがって、ワクチンは100%の効果と100%の安全性が担保されているものではありませんが、感染症の及ぼす様々なリスクを低下させることによるメリットがはるかに大きいことは言うまでもありません。
しかし、以下に提示するいくつかの不安などから、日本では予防接種率が世界各国と比較して低率であり、中でも沖縄県ではその傾向が著明であることは、非常に残念です。
① ワクチンは、とても痛い!
日常生活の中で、保護者がくずったりする子どもに対して『言うことを聞かないと、病院で注射させるからね!』と叱っている光景をよく目にしたものです。
もし、幼少期に何度もそれを繰り返された子どもが、結婚して母親あるいは父親の立場になった時、健康な自分の子どもをワクチン接種のために積極的に病院(診療所)に連れて行こうと思うでしょうか?
② ワクチンは、こわい!
接種後の副反応がこわいと感じる保護者の方は多いと思います。しかし、定期接種 ワクチン(一定の月齢および年齢に達したら役所から通知が届き、対象の児童は全員が接種すべき)の安全性は非常に高く、
予期せぬ副反応および有害事象の可能性より、実施するメリットがはるかに上回っています。
③ ワクチン接種時、特に注意しなければいけない児童は?
最も注意しなければならないのは、『アナフィラキシー』といわれる非常に強いアレルギー反応であり、この場合には、一般に接種することはできません。
たしかに、食物や特定の薬剤にアレルギーが強い場合には注意は必要ですが、それでもほとんど接種可能です。もしそれでも不安が強い場合には、『かかりつけ(小児科)医』に相談しましょう。
ただし、小児ガン治療中の場合や特定の病気で免疫を抑える薬剤を継続している場合には、ぜひ主治医に相談してください。
④ 一度にたくさん接種しても大丈夫?
近年、日本でも諸外国と同様、複数のワクチンを『同時接種』することが標準になっています。その主な理由としては、
(ア)必要な免疫をできるだけ早く賦与するとともに、接種のための通院回数を減らすこと、(イ)ワクチン接種を1種類ずつ実施していては、免疫ができるのに時間がかかってしまい接種完了までに時間を要することから、
最も恩恵をうけるべき月齢をすぎてしまう、(ウ)多数のワクチンを同時に接種することにより副反応の頻度や程度が増すことはないことが明らかになっている、そして(エ)医療者にとっても時間的負担が軽減される、ことによります。
予防接種の実際
1. 注意したい事項
日常生活は、通常通りで結構です。
接種当日朝は、体温が≦37.5℃であることを確認し、もしそれ以上なら実施予定施設に相談しましょう。軽い鼻みずや咳がある場合やそれに対してお薬を服用中でも、通常は予防接種可能です。不安な場合は、ご相談ください!
2. 予診票の記載
事前によく読んで、自宅で記載をおねがいします。不明な項目があれば、その部分は空欄のままで結構です。接種時に、ご質問ください。
3. 付き添い
できれば母親であることが望ましいです(必要があれば、出産時の状況を尋ねることがあります:生下時体重が小さい、在胎週数が満期に満たないなど)。
4. 予防接種の実施
3種類以上を同時に接種する場合、両上腕だけに接種するよりも、大腿部にも接種することがガイドラインにより推奨されています。その1つの理由としては、接種後に副反応として赤くなったり、腫れたりした際にどのワクチンによるものかを判定
することが容易だからです。接種方法としては、従来の皮下注射だけでなく、筋肉注射が推奨されているものもあります。接種後の注意
5.接種後は、重症な副反応の発生は30分以内に最も多いため、できればその間は院内での経過観察が望ましいのですが、実際にはそれが困難なこともあるため、少なくとも15分は院内で経過観察します。
帰宅後は、普段通りの生活が可能であり入浴や食事なども問題ありません。
6.帰宅する時に
次回の予防接種スケジュールを相談して、予約しましょう。そして、帰宅後はできるだけ早くカレンダー(スマホ上でも結構です)にチェック☑しましょう。
【ワクチン別の解説(1歳未満で実施される定期接種)】
●B型肝炎
B型肝炎は、一時的な感染と持続感染がありますが、小児で問題となるのは持続感染で、B型肝炎に持続感染している母親からの垂直感染と小児期の水平感染があります。
特に、免疫反応が不十分な新生児期に感染を受けると、長期にわたって持続感染になり、将来、肝硬変から肝がんに進展するリスクがあります。しかし、予防接種を完全に実施すれば、94-97%の高率で持続感染を予防することができます。
感染経路は、主として感染者の血液や唾液などです。
ワクチン接種よる副反応は数%以下であり、発熱や発赤などがみられますが、いずれも数日以内に回復します。 ワクチンは、ユニバーサルワクチンとして生後2カ月から開始されます。
●ロタウイルス
ロタウイルスによる感染症は、乳児期に激しい嘔吐や白色下痢などをきたし重症化することがあり、特に数カ月以下の乳児では、脱水に陥りやすく、
それによる活気不良や意識障害を起こすこともあります。中には、けいれんおよび脳炎を起こし、後遺症を残すこともあります。主な感染経路は糞口感染であり、
感染力は極めて強くロタウイルス粒子100個程度でも感染が成立すると考えられます。潜伏期間は通常2~ 4日程度で、成人にも感染します。
ワクチンの種類は、2回接種と3回接種の2種類がありますが、効果に大差はありません。
副反応して注意が必要なのは腸重積ですが、現時点ではワクチンとの因果関係は不明です。しかし、初回接種後の1週間以内に多いと言われており、特にその期間に、急な不機嫌およびその持続や経口摂取不良・嘔吐などの出現には要注意であり、
血便なども認める場合は救急対応可能な施設への受診が必要です。その頻度は、0.002~0.003%(数万~数十万にひとり程度)と言われています。
●肺炎球菌感染症
肺炎球菌は、肺炎のみならず敗血症や髄膜炎など重篤な感染を引き起こす可能性があります。致命率や後遺症の頻度は、Hibによる髄膜炎より高く、約20%が予後(長期的な経過)不良とされています。
その傾向は、世界的にほぼ同様であり、そのためワクチンの改良・開発が進んでおり、効果の高いワクチンが実際に使用されるようになっています。
副反応としては、最も多いのが発熱であり接種翌日に最も多く頻度は5%弱です。しかし、多くは≦38.0℃のため、特に医療的処置を要することなく自然に解熱します。
●DPT-IPV-Hib
Dとはジフテリア、Pとは百日咳、Tとは破傷風、IPVとはポリオ、そしてHibとは インフルエンザ桿菌(季節性インフルエンザウイルスではありません)の略称であり、
5種類のワクチンを1つにまとめたものです。以前は、DPTの3種類のみでしたが、その後IPVが追加され4種混合となり、最近ではHibが加わり5種混合ワクチンとなっています。
それにより、子どもたちの接種するワクチン回数が減少したことは、医療者にとっても、非常に喜ばしいことです。
●BCG
日本では結核は、以前より減少傾向にはあるものの、現在でも毎年8.2人/人口10万(毎年10000人程度)がかかっており、中には結核治療薬が効きにくい例もみられます。
したがって、結核はけっして過去の病気ではなく、現在でも予防する意義が大きい病気です。患者の70%以上が60歳以上の高齢者が占めていますが、
かつて結核が蔓延していた時代に結核に感染した人が高齢になって発病しているものと考えられていますBCG接種は、乳児期の粟粒結核、結核性髄膜炎の発生を予防するための最も有効な手段であり、
感染後の発病予防効果も58%と報告されており、高い有用性を認めます。
接種後の副反応としては、接種後1カ月前後から接種側の腋窩リンパ節が腫れることがありますが、ほとんどは数カ月の経過で縮小します。
しかし、まれに接種部位に硬結(硬いしこり)・壊死(皮膚の著しい変色などがみられる)がみられ、2-4週後に潰瘍化するコッホ現象と呼ばれる反応があり、注意が必要です。
【ワクチン別の解説(1歳以降で実施される定期接種)】
●MRワクチン
麻疹(M)は、最近ではほとんど流行することはなくなり、散発する程度になってきましたが、沖縄県では25年ほど前に流行がみられ、肺炎や脳炎・脳症などの重い症状を認め、致命的であった例もありました。
また風しん(R)は、通称三日はしかともよばれるなど麻疹より軽症のイメージが強いですが、けっしてそうではなく十分な抗体(抵抗力)を持たない妊婦が感染すると、
胎児に重い合併症をきたし生涯にわたって後遺症を残すことがある(先天性風疹症候群)など、麻疹と同様予防することが極めて重要な疾患です。
これら2種類のワクチンを混合したMRワクチンの効果は極めて高く、1回接種でも95%程度で、追加接種すると97-99%とさらに高い抗体獲得率となります。
副反応としては、接種後7-12日程度後に認める発熱であり、10%弱で38.5℃以上を呈しますが、ほとんどは1-2日で自然解熱します。
●水痘(水ぼうそう)ワクチン
水痘は、単に水ぶくれを伴う皮疹(ぶつぶつ)が体中にみられるだけでなく、けいれんや意識障害などを呈することもあるなど、
重篤になりうる病気です。接触感染だけでなく空気感染や飛沫感でも感染し、感受性者(抵抗力をもっていない者)ではほぼ100%症状を呈します。妊婦が妊娠初期に初めて感染すると胎児・新生児に重篤な障害をもたらすことがあり、
先天性水痘症候群とよばれます。また、出産直前に妊婦がかかってしまうと、出産後の子どもが重症化する可能性も高まります。
水痘ワクチンの有効率は、重症化予防の観点からはほぼ100%であり、軽症でも85%程度です。1回接種では15%程度では効果が不十分ですが、2回接種ではほとんどが十分な抗体(免疫)を獲得することができます。
●おたふくかぜワクチン
おたふくかぜは、とかく軽い病気と思われがちですが、まれにではありますが脳炎・脳症をおこすこともあり、それによる後遺症をのこすこともあります。
しかし、小児科(耳鼻科)医にとって最も注意が必要な合併症として“ムンプス難聴”があり、その頻度は1/500-800人程度と高率です。しかも、難聴は一時的なものではなく、
生涯持続する可能性が高い高度難聴が80%程度を占めるといわれており、おたふくかぜを侮ってはいけません。
おたふくかぜワクチンを2回定期接種することにより、症状出現を95%以上減少させるといわれており、副反応として、他のワクチンと同様接種部位の軽い疼痛が ありますが、処置をようすることはほとんどありません。
●日本脳炎ワクチン
日本脳炎ウイルスに感染しても多くは無症状ですが、100~1000人に1人程度が 髄膜脳炎あるいは髄膜炎症状を呈します。中でも脳炎を呈すると症状は極めて重篤であり、
致命率は20~40%と高率であり、治癒したとしても重い神経学的な後遺症を残すことが高率です。
定期接種は生後6カ月から可能ですが、標準的には3歳です。したがって、いつから接種するかは、かかりつけ(小児科)医と相談してからがよいと思います。
かつて、予防接種後に急性散在性脳脊髄炎といわれる重篤な症状を呈した子どもを認めたため、
積極的なワクチン接種が控えられた期間がありました(2005~2009年にかけて)が、その後その頻度は非常にまれ(<0.1%)であることが判明しました。
その他の副反応としては、ショックやアナフィラキシー(0.1%未満)などの記載がありますが、いずれも頻度はまれです。
●インフルエンザワクチン
季節性インフルエンザは、ヒトからヒトへ容易に広がり、どの年齢層の誰もが感染しうる頻度の高い病気です。
特に、5歳未満の乳幼児や65歳以上の高齢者そして様々な持病を有しているヒトは重症化しやすいといわれていますが、重篤な合併症とされるインフルエンザ脳炎および脳症は、
年齢を問わず学童児にもみられ後遺症を残すこともあることから、誰でも注意が必要です。
毎年人口の5~10%がかかるといわれており、かかるヒトが多いほど重症化および脳炎・脳症の頻度も高くなります。
インフルエンザワクチンの意義は、重症化の予防が主であり、残念ながら不活化インフルエンザワクチンの効果には限界があります。
しかし、ワクチン株と流行株が一致すれば50%程度の予防効果が認められており、接種する意義は充分あると思われます。
最近、2-18歳までを対象に生ワクチンである点鼻インフルエンザワクチンが使用できるようになりました。
生ワクチンであり1回接種(点鼻)のみで、注射ではないため痛みがないことが利点ですが、まだ高価であることなどが難点です。効果は、ほぼ従来のワクチンと同程度と考えられます。
生ワクチンであるため、2-18歳であっても妊婦には使用することはできません。
ワクチンの効果は、接種後2週間~5カ月間といわれており、そのため毎年の接種が必要です。
●ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン
HPVは、ヒトにとって特殊なウイルスではなく、多くのヒトが感染し一部が子宮頸がんを発症します。
日本では、毎年10000人程度子宮頸がん患者が発生し、2900人程度が死亡しています。子宮頸がんは、すべての年齢層にみられますが、近年、20~30代の若年患者が増加しており、社会的に大きな問題になっています。
HPVワクチンは、他のワクチンと異なり『がん』を予防することができ、現在使用可能なワクチンでは、その効果が80-90%との報告もあります。
予防接種後に、慢性の疼痛や頭痛・嘔吐や意識障害などの症状が出現,遷延する 例を数百万回に1回程度認めるなどしたため、ワクチン接種が一時推奨されなくなりましたが、
現在では、それらと予防接種との因果関係は明らかではないとされており、
積極的な接種が呼びかけられています。
副反応としては、筋肉注射であるため注射部位の疼痛は50%以上に認め、1~10%未満の頻度で発熱や倦怠感があります。
●RSウイルスワクチン
RSウイルス感染症は、乳幼児に多くみられる病気で、ほぼ100%が2歳までに かかります。70%程度は軽症で自然軽快しますが、
残り30%が医療施設受診および入院が必要になります。その中でも、生後6カ月未満で持病を有している乳児で
は、特に重症化するリスクが高いことから、妊娠24-36週の妊婦にワクチン接種することにより、母体のRSウイルスに対する抗体の産生を高め、それが胎盤を通じて
胎児に移行することで、新生児~乳児期早期にかけてのRSウイルス感染およびその重症化を予防する【母子免疫ワクチン】です。重症になる可能性を約50%から85%下げるといわれています。
欧米やカナダでは2023年から、そして日本では2024年5月から使用可能と なっています。
【ワクチン別の解説(【予防接種について結語】)】
予防接種は、生まれてきてくれたすべての子どもたちへの大切なプレゼントです。すべての子どもたちが、心身とも健やかな生活を送ることができるように、 ぜひ機会を逃すことなく定期的に受けるようにしましょう。しかし、何らかの理由で接種をためらうようなことがあれば、かかりつけ医に相談してください。
注意したい子どもの感染症
子どもが、診療所(病院)を受診する症状で最も頻度が高いのは『発熱(体温上昇)』であり、その原因としてはいわゆる『カゼ症候群』が大部分です。
しかし、それはあくまでも一般論であり、保護者の皆様特に周囲に気軽に相談できる家族や親せきがいない方々にとっては、不安が先行し【発熱(体温上昇)出現⇒こわい病気⇒即日、医療施設受診】という対応となることもあるでしょう。
その際、外来および救急受診がすんなり行けばいいのですが、昨今社会状況の劇的な変化(世界的なコロナ感染症の大流行などの影響)や医療状況の著しい変化なども相まって、そう容易ではありません。
24時間対応可能な病院はもちろんのことそうではない診療所でも、日中の外来受診に際しては予約が必要なことが多く(医療施設内においてできるだけヒトとヒトの接触を減らし感染症の危険性を低下させる、
待ち時間を短くする)、そのため予約外受診では長い待ち時間が発生しているのも事実です。そのことは、患者側はもちろんのこと医療者側にとっても大きな課題になっています。
そこで、外来(救急)受診頻度が最も高い乳幼児を念頭に、①発熱、②熱性けいれん、③重要な子どもの感染症、についてできるだけわかりやすく説明したいと思います。
できる限りガイドライン(医師間で共有されている標準的な知識を文書にしたもの)に準じて説明いたしますが、一部に私見を含むことをあらかじめご容赦下さい。
そして、この情報提供が、保護者の皆様が医療施設を受診する際、少しでも参考になれば幸いです。
発熱
体温が何℃以上あれば、『発熱』というのでしょうか?ちなみに、日本人おける腋の下で測定した体温の平均値は、36.89±0.34℃とする報告がありますが、
年齢(月齢)差,個人差および日内変動(起床時に最も低く、夕方から夜間にかけて高くなる)もあるため、杓子定規に発熱を定義するのは困難です。
しかし、一般的にはわきの下で測定した体温が38.0℃以上であれば、小児では明かな体温上昇としてよいとされています。
18-19世紀に解熱剤が開発された当時は、発熱は病的な状態なのですぐに解熱剤で是正すべきとの考えが当然でしたが、
最近では、様々な研究の進歩により、体温上昇は身を守るための生体防御反応のひとつとして理解されるようになっており、発熱が軽度でほとんど苦痛を与えていない場合には解熱剤の必要はなく、むしろ与えない方がよいとされています。
発熱が生体に有利だという根拠として、(ア)発熱により病原体(ウイルス)の増殖が抑制される、(イ)白血球の動きが活発になり、体内に侵入したウイルスを貪食(白血球内に取り込んで食べてしまい、無力化)する働きが活発になる、
(ウ)貪食することにより、免疫機能が活発になる、などが考えられます。
このような事実を踏まえた上で、発熱およびその対処法に関するKey Pointsをまとめると以下のようになります。
・発熱は、病気ではなく生理的つまり当然の反応である
・発熱自身が、脳に障害 (知能障害や発達障害) を及ぼすことはない
・発熱が、病気を増悪させるという証拠はない
・発熱時の最も大切な対処法は、水分摂取励行と適切な安静である
・発熱があっても、睡眠中なら無理やり起こすことはない
・しかし、(軽度でも)不機嫌を呈するなら、解熱剤投与を!
・解熱剤投与後の体温の変化によって、原因がウイルスか細菌(ばい菌)かを
断定することはできない
・解熱剤の投与は、ガイドライン(日本も諸外国も同様)を守って
アセトアミノフェンとして体重1kgあたり10~15mgを使用する。
使用間隔は、4~6時間以上とし、1日量として60mg/kgを限度とする。
熱性けいれん:熱性けいれん診療ガイドライン2023
熱性けいれんは、『おもに生後満6カ月から満60カ月までの乳幼児に起こる発作性疾患(けいれん性,非けいれん性を含む)で、
髄膜炎などの中枢神経感染症などがみられないもので、てんかんの既往のあるものは除外される』と定義されています。
わが国では、熱性けいれんの頻度は7~11%とされ、諸外国(2~5%)より高率です。熱性けいれんの再発率は,一般に1回目の1/3が2回目を起こし、そして2回目を起こすとその1/3-4程度で3回目を起こすといわれています。
しかし、再発率は再発予測因子の有無により大きく異なり、1つも認めない場合には2年以内の再発率は14%と比較的低率ですが、陽性因子が多いほど高率になります。
熱性けいれんの再発予測因子
(ア)熱性けいれんの家族歴(両親,同胞)
(イ)若年発症(生後12カ月未満)
(ウ)発熱⇒発作まで短時間(1時間以内)
(エ)発作時非高体温(39℃以下)
したがって、以上の因子を多く有する場合には、小児神経専門医によるアドバイスが必要と思われます。
今回の熱性けいれん診療に関するガイドラインにおいて、診療方針の重要改訂として、以下の点などがあります。
1.来院時に熱性けいれんが止まっている場合に、外来でジアゼパム坐剤を使用した方がよいか?
2.熱性けいれんの再発予防のために解熱剤を使用すべきか?
3.熱性けいれんの既往がある小児は予防接種をうけてよいか?
4.熱性けいれんの既往がある小児に予防接種を行う場合、最終発作から経過観察期間をどれくらいあければよいか?
以上のような質問に対して、適切な推奨が呈示されています。もし、心あたりの方は小児神経専門医(あるいはかかりつけ医)を受診した際におたずねください。
重要な子どもの感染症
1.かぜ(上気道炎)
・かぜは、秋から冬にかけて比較的多いものの、年中みられます
・原因は、ほとんどがウイルスによるもので多くのウイルスが関します
⇒したがって、抗菌薬は効果がない。しかし、受診した保護者の44%がかぜに抗菌薬が有効であると考えており、30%がその処方を希望するという調査結果があります
・保護者の60%以上が、咳止め薬や鼻汁・鼻閉に対する薬剤を希望します
(私見:乳幼児に対する安易な咳止めや鼻汁・鼻閉に対する薬剤の処方には、様々な弊害がある)
・治療の基本は、適切な水分補給(塩分・糖分も)と休息です
・インターネットでは、かぜ?の時は耳鼻科受診を勧めているようですが、そうではなく小児科医を受診してください
(のどや耳だけを診るのではなく,全身状態をみる必要があります)
・処方内容は、小児科医でも大きく異なり、受診に際しては診察した医師の説明を聴いて、疑問があれば質問・相談しましょう!
2.RSウイルス感染症:厚労省RSウイルス感染症Q&A,日本小児科学会
・1歳までに50%,2歳までにほぼ100%の乳幼児がかかる
・感染経路は、主に『接触感染』であり、飛沫感染もあるが空気感染はしない
・潜伏期間は、2-8日(典型的には4~6日) ・症状としては、鼻汁や咳,ゼーゼー(喘鳴)および軽度の体温上昇が主です
初めて感染した乳幼児の約7割は1週間程度の上気道炎症状で自然軽快しますが、約3割が咳こみ,ゼーゼー(喘鳴)など呼吸状態の悪化を認めます
・重篤な合併症として、無呼吸発作、呼吸不全および急性脳症などがあります
・機嫌がよく、哺乳がいつも通り良好であれば、慌てず自宅で様子をみましょう
ただし、寝づらそうだったり、哺乳量が明らかに減少している場合には、医療機関の受診が必要です
・特別な治療法はなく、症状に応じて対処(酸素投与,点滴,呼吸管理)です
・重症化リスクの高い乳幼児には、主治医があらかじめ説明があるはずです
・迅速検査(5~15分程度で判定)の実施は必須ではありません
(厚労省のQ&Aには記載なし 当院では、迅速検査は実施していない)
・最近妊婦に対するRSワクチンが使用可能となり、その接種により生後6カ月までの乳児における重症RSウイルス下気道感染症に対して69.4%有効との報告があります
・それに対して出産後に、感染すると重症化する可能性の高い乳児に対して注射で予防する方法もあります
3.百日咳
・百日咳菌とよばれる細菌が原因です
・ワクチン未接種児や接種未完了児に多くみられます
・発熱はあまりないため、初期では軽いかぜと見分けがつきにくいです
・典型的な症状としては、激しい咳こみと咳こみ後の顔面紅潮などが長期間持続することですが、数か月未満の乳児ではせき込み後に無呼吸(呼吸しなくなる) がみられたりするなど、重症化する可能性があります
4.麻疹(はしか)
・空気感染によって伝播する感染力が極めて強いウイルスウイルス感染症です(1人から12~18人に伝染)
・発疹が出現する4日程度前から、出現後4日程度まで感染性があります
・症状出現後ごく初期には、かぜ症状と区別がつきにくいことがあります
・発疹(耳介後部⇒頚部・顔面⇒体⇒手足)が出現し、拡大
・発疹同士が癒合(個別に出現した発疹が重なり合う)
・通常は、7~10日程度で徐々に回復します
・肺炎や意識障害・けいれんなど重い合併症で、致命的なになることがあります
5.水痘(みずぼうそう)
・空気感染によって伝播する感染力が極めて強いウイルス感染症(1人から10人程度に伝染)
・発疹が出現する2日前からすべての発疹がかさぶた(痂皮化)になるまで感染性があります
・発疹が、頭部にも出現するのが、他の発疹性疾患と違う特徴
・症状としては、発疹だけでなく肺炎や脳炎,細菌感染症などの合併症がある
・合併症がなければ、自然経過で軽快するが、日本では積極的に抗ウイルス薬が使用されています(個人的には、相談して処方します)
6.エンテロウイルス
・このウイルスによる代表的な疾患に、①ヘルパンギーナ,②手足口病があります
・両者とも、潜伏期間は3~6日です
・両者の違いは発疹の出現部位であり、①は口蓋垂近辺(のどぼとけ),②は文字通り手足そして口腔内が典型であるが、膝周囲や臀部など様々な部位に発疹が出現します
・治療としては、特異的なものはなく対症療法(症状に応じて対処)であり、5~7日程度で自然治癒します
・症状が軽度で全身状態良好の場合には、登園停止は必要ありません
子どものアレルギー疾患
ワクチン接種や感染症以外で、小児科外来を受診する最も多い病気に『アレルギー疾患』があります。
最近では、耳慣れたことばですが、私がそれを専門に小児科診療に携わりはじめた1987年頃は、沖縄県で私以外誰もアレルギー疾患専門の小児科医はいませんでした。
最近では、非常に多くの専門医が沖縄県内で活躍しています。アトピー性皮膚炎に始まり、食物アレルギー⇔気管支喘息,アレルギー性鼻炎へと表の顔が次々変化していく状況にお困りの保護者の皆様もいらっしゃるでしょう。
しかし、本態はすべての病気に共通しています。それは、先祖から受け継いだ体質と様々な要因が複雑に絡み合って症状が出現,変化していくのです。
したがって、アレルギー疾患の根本的な治療は、薬による治療だけでは全く不十分であり、食生活やその他の生活習慣の改善を基本とし、しかもそれを長期間継続していく必要があります。
その間、頼れる,そして親しみやすい主治医がいるかどうかはアレルギーに悩んでいる子どもたちや保護者の皆様にとって、最も重要な要素のひとつです。
現在では、小児科クリニックの多くが『アレルギー疾患専門』を標榜しており、その中でどこを受診するかを選択するのはなかなか困難です。
また、昨今のインターネット環境では簡単に情報が得ることができますが、その中から正確な情報を取捨選択する能力も必要です。
保護者の皆様とアレルギー疾患をお持ちの子どもたちが、主治(かかりつけ)医とチームを組んでアレルギー疾患に立ち向かえるように祈っています。
♯8000 沖縄県子ども医療電話相談事業の紹介
最後に、上記左記を紹介させていただきます。
皆様がお持ちのスマホでQRコードをよみとっていただければ、
①「気になる症状」
② #8000に電話をかける
③「子ども救急ハンドブック」
などにアクセスでき、皆様に役立つ情報が得られると思います。
ぜひ、ご活用ください。
〇小児救急電話相談
電話:♯8000 (受付時間:平日午後7時~翌朝8時、土日祝日24時間)
「♯」ダイヤルが使用できない電話をお持ちの方の場合は、
「098-888-5230」へおかけください。
〇沖縄県発熱コールセンター
電話: 098-866-2129(受付時間:24時間)
〇沖縄県ホームページもご参照ください (外部リンク)
〇子ども救急ハンドブック (外部リンク)
診療スケジュール
内科受付時間
| 受付時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 午前 09:00~11:30 | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 午後 02:00~05:30 | ● | ● | ● | / | ● | / |
※木曜午後、土曜午後、日曜日と祝日は休診です。
小児科受付時間
| 受付時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 午前 09:00~11:30 | ● | ● | ● | / | ● | ● |
※木曜、日曜日と祝日は休診です。

